「ほっ」と。キャンペーン

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チェーン展開の汚い居酒屋のカウンターで僕は
ほうれん草なんかを見つめながらお酒を飲んでいて
その右に二席空けた向こうに、僕と同じようにテーブルの模様を見つめている
ねずみ色のコートを着たままのおじさんが座っていることは
なんとなく気配でわかる

僕の後ろからはガヤガヤとした明るい話し声や笑い声が聞こえるけれども
いったいそれが何グループいて何人なのかは
全然解らない
物音一つださないおじさんを見えない目で見ている方が、まだはっきりとしている

これじゃあまるで別々の星にいるみたいだね と思うと
僕は不思議に楽しくなってきて
好きなSF作家を一人ずつ思い浮かべてみたりする
死んでるのと生きてるのを分けて

ヴォネガットまできた辺りで死んでる方が多いことに気がついて
僕はほうれん草の色が分からなくなるんだけれども
ここは外だから泣くわけにもいかないし もちろん僕の本棚も無いわけだ
それなら残ったお酒をすすって さっさと帰ればいいんだけど

僕は今日は隣の隣の隣のおじさんよりも先に帰らないって決めてたから
右の壁から薄黄色に汚れた岡本夏生が僕を見て笑っているけども
女の子に笑われるのは慣れているし 声が聞こえない分ずっとましだ
もしかすると僕の耳がダメになってるだけかもしれないけど ね

僕は明日の朝 髭を剃ろうとして失明する予定なんだけども
そしたら君も一緒に何も見えなくなってくれると 僕はとても嬉しい

ところで僕はいつになったら帰れるのだろうか
おじさんなんて最初からいないし 僕は家に閉じこもったままだ
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by HALinNT | 2009-09-28 20:12 |
あれはたしか12月の初めの頃で
夕日がギチギチを差し込む教室には、もう僕と君しかいなくて
ストーブも消されちゃってるから だんだん寒くなってきていた

僕と君は お互いに誰もいないような顔をして
黙々とノートを鉛筆でグリグリと塗りつぶしていたり 机にコンパスの針で穴をあけて、そこにバンドエイドを貼っていたりしていたのだけれど
ノートを8割方 真っ黒にして、ふと顔を上げると
目の前に突然ノートを覗き込んでいる君が現れたんだ

なんにも言わないまま 僕と君はちょっとの間 見つめあっていだんだけど
僕は耐え切れなくなって思わず手に持っていた鉛筆をボキリと折ったんだ
そしたら君はちょっと笑って 僕の折角真っ黒にしたノートを人差し指で撫でて
黒くなってしまった指先を僕に見せてきた

僕はもう このまま君にこの教室が支配されてしまって
例えば本当に誰もいなくなったらカーテンにぐるぐる巻きに包まってちょっと泣こうとか
一番可愛いあの娘のリコーダーでドナドナを吹いてみようとか
そういった僕の今日の予定が全部台無しにされてしまいそうな気がしたんだ

だから僕はこの教室は僕のものだと確かめるために ちょっとだけおしっこをもらそうと思ったんだ

君は指先を真っ黒にすることに夢中みたいだし ほんのちょっとだけじんわりとパンツににじむくらいだけ おしっこをもらしてやろう
この教室は僕にとってはトイレみたいなもんだし 僕のトイレに君が入ってくるのはいけない事だから、そうすればこの教室の権利は僕のものになる

じん「ねえ」わり

君があんまり突然に話しかけるものだから 完全に君の事を忘れておしっこをもらそうとしていた僕はひどく驚いてしまって
君のことをじっと見つめたんだ

そしたらおしっこをもらそうとしていた事も忘れてしまって
でももうちょっと出してしまっていたから

僕はその時出せるだけのおしっこを全部教室にぶちまけた

それから先の事を僕はもう覚えてないから それを誰が片付けたかとかはまったく覚えてないし
もっと言えば教室にいた君の名前を思い出せないでいる


ところで僕はずっと不登校だったんだけど この思い出は誰のいつのものなんだろう?
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by HALinNT | 2009-09-27 09:13 |

グリーン一号

電流を君の目玉に流して
流れた涙は3万ボルト
夕闇潜む斬撃
何重にも重なって膨らむ
スローモーションで変わっていく

混乱を秘めて騒ぐ
歌声は3000ケルビン
布団潜む血脈
何千にも突き刺して飛び散る
スローモーションで変わっていく

今 この先に この先に
何も無いなんてことは知ってる
今この先にこの先に
何の理解も無いことは知ってる

只 一号と 呼ばれたい
只一号と呼ばれたい
何も持たない事でしか
何も捨てない事でしか
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by HALinNT | 2009-09-02 00:00 |

8mmスター

ぼくじょうしーぼーりー ぼくじょうしーぼーりー
きみのぼくじょうからしぼっちゃうぞー
ぼくじょうしーぼーりー

俺にはもう 俺にしかわかんねぇもんしか
作れねーんだよ

わかります とか言ってくれるな 共感なんか してくれるな
ぼくじょうしーぼーりー

俺は俺の星に住んで 一生を誰にも見えない
女の子と
ぼくじょうしーぼーりー ぼくじょうしーぼーりー

それはおよそ 直径8mmの星
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by HALinNT | 2009-09-01 23:55 |