「ほっ」と。キャンペーン

自閉引力

1本のビデオテープがある
そう、ビデオテープ DVDじゃない
これをとっても気に入っていて
だから未だにビデオデッキが処分できない

ずっと変わらない赤信号を見ている
本当は歩いたり走ったりする必要なんて一つも無かった
目の前の景色はゆっくりと流れていって
ずっと変わらない赤信号を待っている

再生ボタンを押すと、池一面の蓮の花
そしてその全部が逆回転で
ゆっくりゆっくりと閉じていく
一輪ずつ 小さく 閉じて 蕾に戻っていく

小さな鍋でお湯を沸かしている
次々に産まれる気泡を覗き込んで
ゆっくりと深呼吸をする
細く音を立てる気管は
遠い国から迷い込んだ笛の音に似てる

最後の一輪が蕾に戻っていく
気がつくと部屋の中は
テレビの明かりだけで照らされていて
つけたくもない蛍光灯のスイッチを入れる

上手く行かなかった青春から
全力で目を逸らせ
一コマずつ変わっていく風景や
喘息の奏でるダンスナンバーや
目を閉じる様に俯いていく花や
布団の中で探す誰かの手で

毎日
今日死んでしまった想いの為
僕等はお葬式を挙げている
塞ぎこんで 誰かの言葉をやり過ごした
明日は何が纏わり付くのだろう

何かから開放された時には
本当にしっかりと生きようを決めていた筈だった
雨が降っていたから
僕は思わず傘を閉じた
そして何から忘れていけばいいんだい?

イジェクトボタンを押して
ビデオテープを叩き割った
プラスチックの砕ける音はまるで
行かなかった卒業式の拍手の様
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# by HALinNT | 2010-10-05 18:02 |

+0.1mm

湿った風に胞子が舞う
今日いくつの想いが蒔かれた
今日いくつの夢が潰えた
でも私は昨日と同じ量のご飯を炊く

乾いた風に歌声が乗る
明日いくつの種が蒔かれた
明日いくつの花が枯れた
でも私は今日と同じ量のご飯を炊く

世界の99.8%は昨日と今日と明日と同じで
少しずつどこかで 生きて死んでいく
まるで私の爪みたい
パチンパチン パチンパチン

12時に寝て 7時に起きて
お弁当を作って 仕事に行って
ビニール傘を失くして
鏡の前で詩を書いている

湿った風に嗚咽が舞う
乾いた風にハルトゼーカーが乗る
そして私は伸びた爪を切っている
そして私は反射する光を詩に閉じ込めている
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# by HALinNT | 2010-09-24 00:00 |
朝 目を閉じながら目を覚まして
とても小さな金属のベアリングが
アスファルトに跳ね返って響いている

ルンペン達はケブラーの傘を差して
そのランダムに踊る丸い光を追いかける
一升桝一杯で20円也

バイクのタンクは雪平模様
鋭い角度で跳ね返り
今日も27人の児童が眼球にキズをつけました

弾足はますます強くなり
鈍く連続的に光る銀色は
処理落ちした弾幕シューティング
果物は全滅です

3年前に君がかけた祝福は
今もこんなに有効だよと
割れたガラスで指を切りながら思う

丸い血の染み
金属球がカチリ
丸い血の染み
金属球がカチリ

正確無比に落とされていく
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# by HALinNT | 2010-09-06 21:10 |
例えば 僕にしか行けない国があるとして
君はその国の事なんか、何一つ知らないし
僕もわざわざ教える気なんて無いから
この話はおしまい

死にたいと思うのと
誰かが生きていて欲しいと思うのは
イコールだよイコール めちゃくちゃイコール
僕の顔をお食べよ

今この言葉が呪いになって
全人類の胸に赤く刺さって
どんよりとした空になればいいのに!

正しく生きて行けないのなら
正しくなく生きていくしかないじゃないかと
冬の子供達が 満月に言っていた

その時に吸い込んだ冷たい粒子が
まだ肺から抜けないんだ

つまりは 早くライダーキックで
僕を倒してはくれないか 
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# by HALinNT | 2010-08-27 23:34 |

吐息に発破

残された時間を数えるのと
今までの曲がり角を数えるのと
建設的なのは どっちだろうか?
そしてそれを全部吹き飛ばすパワービートと

虚無に愛の告白をするのと
少なくとも誰かの体温に触れるのと
有効打なのは どっちだろうか?
そしてそれを全部吹き飛ばすスペルキャスターと

あるいは よく言われる様に
今10年前から戻ってきたのなら
違わずに同じ10年を過ごす方法
釘で腕に刻もう
そしてそれを全部吹き飛ばす怒れる桜と


エアコンの音だけが耳に響いて
暗闇で目だけが光る

何もかも吹き飛ばしてくれ
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# by HALinNT | 2010-08-27 23:26 | 遺作群

ゲダツプラネット

融像する世界 ユニゾンする魂
融像する世界 ユニゾンする魂
浄道蹴って 展開する曼荼羅
那由他の夢割る 因律フーガ
意味的世界でホーミー ループするパラノイア/バラライカ
右と左に差は無く 上と下に境界は無い

誘導する世界 唯存する魂
誘導する世界 唯存する魂
経文撃って散開する 25×40の手
構造と力捻る 応報ガール
ポワソン分布寄り添う 変化する三千世界/一次元
仏陀と修羅に差は無く 天と地にも境界は無い
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# by HALinNT | 2010-08-12 19:40 |

突破主義の歯

このラインから向こうが君の国で
このラインからこちらが僕の国で
アフリカの国境線は誰かが計ったように
真っ直ぐに引かれている
これは比喩表現ではなく
誰が謀ったのか知らない という話

このドアから向こうが誰かの世界で
このドアからこちらが僕等の世界で
今にぎりしめたドアノブがまさにその接点で
ゆっくりと僕は手を放す
外に出る事は社会性の獲得ではない
内に篭る事は自己実現からの逃避ではない

バラクーダが象の耳元で囁く
水の中でナイショ話 大きな耳でも届かない

生存の本能が精神を爆発的に進化させる
生存の本能が精神を爆発的に進化させる
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# by HALinNT | 2010-08-12 19:31 |

枠外写真

この真新しい部屋には何にも無くて
僕は隅でしゃがんで ヨックモックのクッキーをサクサク
たぶん ぼくは なにかを すてて
多分僕は何かを拾いに
ここに来たんだけれど、けども

ミルクとバターと砂糖なら幾らでも思い出せるのに
小麦粉の味だけ なぜか解らなくて
ヨックモックだから それは僕のトラブルなんだろう

窓から見える小さなベランダから
こぼれてくる 光もだんだん小さくなって

がらんどうの、この部屋から何かを見つけて
僕は携帯を取り出して 『カシャリ』
僕のこれからも この真っ暗な部屋の様に
どこまでも続いて行ける 気がして
もう全然、壁なんて見えないし
でも全然、床すらも見えないし

まるで深海か宇宙か棺桶の中で 目を開けてるみたい

ケータイの画面には ただ真っ黒の
一面真っ黒の何かが写ってるだけで
僕の「これから」がもう決まってしまっている、そんな
そんな恐怖は気のせいだって 教えてくれる

真っ黒な画面を保存して
ホッとしたり ソワソワしたり
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# by HALinNT | 2010-07-21 12:29 |