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by HALinNT

海月

海亀は私を食い千切りながら
「今年の冬は、なんだか暖かいね」と
波間をぬって話しかける

傷口は海水に洗われ
兎の様にポロポロと涙しながら
「本当にそうだね」と小さな針を飛ばす

水に溶け合いながら
ギリギリの境界線を揺蕩う
ガラスの積み木は 私にも見えない

どこまで重ねれば
水面から顔を出して
月明かりと反射できるのだろうか

海の外は 肌が乾く
また うねりに飲まれ
私が見えなくなる世界と帰る

いつかこの 生暖かい海に
溶けて しまう のだろうか
いつかこの 誰にも見えないブロック
砕けて しまう のだろうか
# by HALinNT | 2010-12-10 23:57 |

星を砕く

子供は夜を
夜を食べる
夜を食べて大きくなる

大人は夜を
夜を忘れる
夜を忘れて語り明かす

子供たち
食べな 食べな
大人になんて、ゆっくりなればいい
夜はまだ 甘く柔らかい

大人達
寝るな寝るな
残された時間は余りにも少ない
夜はもっと苦く固い

石臼な夜風が
粉砂糖を運んでくる
子供は夜を
夜を食べる

石炭な夜風が
ランタンを躍らせる
大人は夜を
夜を忘れる
# by HALinNT | 2010-12-10 23:46 |

想真冬

道行情婦外皮増層
空只青乱雲砕
思出宿私脳芯
夜帳胸這寄

咽喉燃血反吐吐残響
扼腕本棚倒壊
須冬来波紋

雲千切鳥姿
誘導着地私胸
容戻水鳴滴落
只波等波等涙似
思因不意走意識
理解至前零囁

目瞑耳塞
静黙待青冬溶
両手私肩抱
暖気唯是一
# by HALinNT | 2010-10-28 23:23 |

PBmR

ビリンヤスカ 君だけさ
僕に話しかけてくれるのは
毛布に包まってクスクス笑う
もう夜が明けない事を教えてくれるよ

ビリンヤスカ 君だけさ
僕に優しくしてくれるのは
枕元のスタンドで手元を照らして
詩を書いてる僕の邪魔して喜んでるね

耳元でこっそり柔らかくささやいてる
「ねぇ そんな事は無意味だよ」って
ぽしょぽしょと唇が音を鳴らして
彼女の髪 僕の鼻先をくすぐってる

僕はにっこり笑ったあとに
ビリンヤスカ 君にこう言うんだ




なんなんだよお前は、マジで、ふざけんな!
人が痛い思いして必死で書いてるもんを
よくも無意味だなんて言ってくれたな!
ああ知ってるよ!無意味だよ!
でもそんなことはお前が口を出す様な事じゃないだろ!
何度も何度もお前みたいな奴が!
無意味だ無意味だって言うから!
本当に無意味になってしまいそうだよ!
小学生の頃、国語の授業で!
僕は詩を書いた!それは死んだ蛙の詩だ!
先生は気持ち悪いから書き直せと言ったんだ!
だから!僕は!
教室の一番前で、叫んだんだ!
キレイなものばかりを書くのが詩じゃない!!って!!
今でもその時の熱量が僕を捕まえて!
それからずっと詩ばっかり書いてるんだ!
それからずっと学校には行かなかったんだ!
今の話は全部嘘だ!
本当は幼稚園で蟻の巣に熱湯を注いだ時に!
蟻の巣から飛び出した詩の神様が鼻から脳に滑り込んだからだ!
今の話は全部嘘だ!
とにかくもう邪魔はしないでくれ!
もう僕に触るんじゃない!触るな!
なんなんだよ・・・マジで・・・なんなんだよ・・・



ダンボールを重ねたベッドで
私は遠い星の夢を見る
そこでは私が僕で
幸せな花を咲かせている

もう夜は冷えて
自分の体温だけが あたたかい
# by HALinNT | 2010-10-24 22:36 |

自閉引力

1本のビデオテープがある
そう、ビデオテープ DVDじゃない
これをとっても気に入っていて
だから未だにビデオデッキが処分できない

ずっと変わらない赤信号を見ている
本当は歩いたり走ったりする必要なんて一つも無かった
目の前の景色はゆっくりと流れていって
ずっと変わらない赤信号を待っている

再生ボタンを押すと、池一面の蓮の花
そしてその全部が逆回転で
ゆっくりゆっくりと閉じていく
一輪ずつ 小さく 閉じて 蕾に戻っていく

小さな鍋でお湯を沸かしている
次々に産まれる気泡を覗き込んで
ゆっくりと深呼吸をする
細く音を立てる気管は
遠い国から迷い込んだ笛の音に似てる

最後の一輪が蕾に戻っていく
気がつくと部屋の中は
テレビの明かりだけで照らされていて
つけたくもない蛍光灯のスイッチを入れる

上手く行かなかった青春から
全力で目を逸らせ
一コマずつ変わっていく風景や
喘息の奏でるダンスナンバーや
目を閉じる様に俯いていく花や
布団の中で探す誰かの手で

毎日
今日死んでしまった想いの為
僕等はお葬式を挙げている
塞ぎこんで 誰かの言葉をやり過ごした
明日は何が纏わり付くのだろう

何かから開放された時には
本当にしっかりと生きようを決めていた筈だった
雨が降っていたから
僕は思わず傘を閉じた
そして何から忘れていけばいいんだい?

イジェクトボタンを押して
ビデオテープを叩き割った
プラスチックの砕ける音はまるで
行かなかった卒業式の拍手の様
# by HALinNT | 2010-10-05 18:02 |